ストライベック曲線とオイル選び

まずはじめに、ストライベック曲線とは何か。
簡単に言えば、負荷に対しての油膜の厚みと抵抗の関係を、簡略化したグラフです。
Stribeck
グラフを左から見ていきましょう。

まず、線の位置が高い_つまり抵抗の高い位置が平べったく続いているエリア。
これは「境界潤滑」と呼ばれます。油膜が全く足りておらず、
金属表面または表面についた被膜や結合した分子が擦れ合っています。

そこを過ぎると、右下に下っていく部分があります。
これは「混合潤滑」と呼ばれ、部品同士が部分的に擦れたり擦れなかったりする部分です。

そして下のピークから先は「流体潤滑」
油膜が十分にあり、部品が完全に浮いている状態です。

さらに細かいところを見ると、流体潤滑と境界潤滑の間に「弾性流体潤滑」というものがありますが、
今回そこまで突っ込んだ話はしないので省きます。


さてこのグラフを見ると、一番抵抗を小さくするために狙うところが見えてきますね。
そう、流体潤滑のなかで一番油膜が薄いところです。

ところが、ここで問題が生じます。
エンジンの中は、均等に潤滑されてはいません。
重力に逆らってオイルを圧送しているため、どうしても上の方が油膜が薄くなってきてしまいます。

すると例えば低い位置にあるクランクシャフトを一番良いところに持ってきた場合、
高い位置にあるピストンやカムの油膜が不足し、抵抗が増えて摩耗が進んでしまいます。
逆にピストンやカムの保護を重視してすべてを流体潤滑しようとすると、
クランクシャフト部分の油膜が厚すぎ、抵抗が大きくなってしまいます。
難しい問題ですね。

近年の車は、ローラーロッカーやDLCコーティングの採用などで弱点の摩擦・摩耗を低減し、
低粘度オイルを使用しても却って抵抗が増えたり、異常摩耗が生じたりしないよう設計されています。
しかし5W-30以上を指定オイルにしているような年代の車では、近年のものほど優れた対策がとられていません。
そのため、カムやピストンの摩耗を防ぎ、エンジン全体での抵抗を減らすため、固めのオイルを選定することになります。

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